「経営リテラシー」とは、経営における基礎的な知識やその活用能力のことを言います。
九州大学ビジネス・スクールでは、企業経営に必要な基本科目(組織マネジメント、企業財務、マーケティング戦略、アカウンティング、英語によるビジネス・コミュニケーション、企業倫理)を必須科目(主に、1年次に履修)とし、経済・経営を専門に学んでいない社会人学生にもスムースな学習導入が行われています。
更に、1年次後半以降は、ビジネス・プロフェッショナルとして重要な応用又は展開科目を受講できるよう工夫しています。より具体的イメージは「時間割とシラバス」をご覧下さい。
九州大学ビジネス・スクールは、「経営と産業技術の知見をもって変革をリードし、アジアで新たな事業価値を創造する国際的なビジネス・プロフェッショナル」の育成を目指しています。入学後、全員がビジネス・リーダーに必要な基礎的科目(アカウンティング、マーケティング戦略、企業財務など)を学びますが、専門科目では、技術経営やアジア・ビジネスに関する知識を習得することができます。
技術経営(MOT:management of technology)とは、技術から経済的価値を創出していくためのマネジメントであり、関連する科目には知的財産管理、研究開発マネジメント、イノベーション・マネジメント等があります。いずれも、理科系・文科系の出身を問わず、本格的な技術経営の知識を習得することができる科目です。アジア志向は九州大学の研究教育活動の主要な柱であり、長年の蓄積があります。QBSにおいても、アジアに造詣が深い教員によるアジア関連の科目が用意され、アジア・ビジネスで活躍できる人材の育成を目指しています。
また、アジア・ビジネスに関する専門科目以外でも多くの科目でアジア志向が意識されています。更に、アジア諸国の提携ビジネススクールとの単位互換による、交換留学を実施し、アジアビジネスの実践的学習が可能なシステムを備えています。
近年のビジネスでは、「モノ」が使われる際のユーザー・エクスペリエンス(UX)や「モノ」を介するサービスの仕組みを包含する「コト」の概念が重視されるようになりました。さらには、「モノ」が使われることで実現される組織や社会のビジョンを描く行為も含めて、広義なデザインの概念がビジネスに取り込まれる時代となっています。
また、不確実な時代環境において、まだ顕在化していない需要を見出し、それを事業機会として捉え、そこから新たな価値を創造するアントレプレナーシップは、ビジネス・パーソンが持つべき素養として重要性を増しています。
このように、近年のビジネスがデザインやアントレプレナーシップと緊密化する傾向を捉え、これらの専門領域が融合した教育を三部局連携(QBS、芸術工学府、QREC)の枠組みで提供するために、2022年からQBSにデザイン✕ビジネス✕アントレプレナーシップ専修トラック(Design/Business/Entrepreneurship Crossing Track, 略称:DBEX)の運用を開始しました。DBEXで育成する人材像は、以下のとおりです。
「MBA(経営修士)が包含する経営マネジメント能力を有し、デザインの力を駆使しながら事業機会を発見し、新たな価値創造に挑戦するアントレプレナーシップ溢れる人材」
QBSの修了要件を満たしたうえで、DBEX科目群から所定の単位数を修得した人には、MBAの学位に加えて『DBEX修了証(サーティフィケート)』が授与されます。
三部局連携のイメージ
経営専門職に求められる知識、能力を修得するための科目により編成を行っています。また、本専攻の目標に、「経営と産業技術の知見をもって変革をリードし、アジアで新たな事業価値を創造する国際的なビジネス・プロフェッショナル」を育成すべき人材像としており、この目標に合致したカリキュラムを提供しています。
具体的には、下記の表の通り、経営専門職育成のためのマネジメント関連基礎科目(MBAベーシックス)を土台として、「資源・組織分野」「市場・戦略分野」「金融・財務分野」「アジア分野」「MOT分野」「特講・特論」の選択科目により構成されています。
プロジェクト演習では2年次の1年をかけて学生の興味に従って理論と実務を架橋する取り組みを支援しています。また、これらの科目は、バランスよく配置された研究者教員と実務家教員が担っています。更に、多くの授業において、理論的学習と事例研究の組み合わせが実施されています。事例研究には、現場見学、ビジネスの最前線で活躍中のビジネス・プロフェッショナルの招聘などが含まれ、経営の現場や実際の経営判断などについて調査・見聞し、実践力を磨くことが可能です。
科目区分 | 科目名 | 各科目の目標 | |
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必修科目 | MBAベーシック科目群 | 組織マネジメント | 組織の編成原理等の形態的分析と意思決定等をめぐる内部プロセスを分析する。 |
マーケティング戦略 | マーケティングの基本原理を学び、現代企業のマーケティング戦略の展開を分析する。 | ||
アカウンティング | キャッシュ・フロー計算書と損益計算書、賃借対照表の相互関係を学ぶ。 | ||
企業財務 | 企業財務の基本理念を学び、実務適用の際の問題点、解決方法を検討する。 | ||
企業倫理 | 企業倫理、企業社会責任(CSR)等の事例を通じて、企業経営のあり方を考える。 | ||
英語によるビジネス・コミュニケーション* | ビジネスに用いられる言い回しや交渉時の意思表示等、実践的なビジネス英語を学ぶ。 | ||
選択科目・ 選択必修科目 |
資源・組織分野 | 戦略的人的資源管理 | 人的資源をめぐる企業の実態分析を行い、そのマネジメント政策等を学ぶ。 |
マネジメント・コントロール ※ | 経営計画の策定、経営実現の意思決定と実行、その成果の統制などの一連のマネジメントプロセスを学ぶ。 | ||
コーポレート・ガバナンスと監査 | 企業統治の背景や基本理念等を学ぶとともに、監査のあり方を検討する。 | ||
経営リスク・マネジメント | 企業経営執行時におけるリスク全般の実践的対応について検討する。 | ||
ビジネス法務 | 企業の経営・管理に不可欠な法的知識の基礎、最先端の企業取引の実例を学ぶ。 | ||
国際ビジネス法 | 国際ビジネスと密接な関係を有する知的財産法等の概要を理解し、国際ビジネスで留意すべきことを習得する。 | ||
市場・戦略分野 |
企業戦略 | 事例により、理論と実践の両面から現代企業の戦略について理解を深める。 | |
国際ロジスティクス ※ | 製造企業の価値連鎖の構築、競争力向上を図る方法等を分析する。 | ||
国際マーケティング(※) | ケースを通じて、標準化と適応化、グローバルブランドの管理と組織等のテーマに迫る。 | ||
国際企業分析 (※) | 外部から企業を分析するという視点で企業分析の理論と方法を学ぶ。 | ||
国際経営 | 市場、組織、戦略、マネジメント等多国籍企業を取り巻く環境変化への対応を分析する。 | ||
ミクロ経済学 | 現実の社会やビジネスの場面で遭遇する様々な現象を経済学的に理解・分析するための基本能力を養う。 | ||
パブリック・マネジメント | 公共セクターの課題を概観し、経営の視点から分析、評価、改革する理論と方法を学ぶ。 | ||
産業と政策 | 「政策介入」をめぐる経済理論を概観し、現実の政策展開とそれが市場に及ぼすインパクトの客観的分析を学ぶ。 | ||
産業と企業 | 今グローバルに生じている経済や企業の動向を踏まえて、産業や企業の抱えている課題を戦略的に捉える視点を学ぶ。 | ||
金融・財務分野 |
ファイナンシャル・マネジメント | 企業の資金・会計活動の管理と財務的意思決定への貢献を主軸とする財務管理について学ぶ。 | |
企業価値創造とM&A ※ | 事業ポートフォリオの再構築や資本構築の最適化の方法と問題点を検討する。 | ||
財務会計 | 財務会計の基礎的概念と国際財務報告基準(IFRS)や会計ビッグバン、商法等を学ぶ。 | ||
管理会計 | 管理会計の基礎的理論の修得を目的とする。また、実際企業での管理会計の適用例を考察し、理解を深める。 | ||
資産運用とリスク管理 | 株式の銘柄選択、株価形成のメカニズム、債券ポートフォリオ運用、資産運用業界やリスク管理の実態を中心に学ぶ。 | ||
タックス・マネジメント | 法人税を中心とする租税に関する基本理念や計算原理等の構造及び理論を、事例を交えて分析的に学ぶ。 | ||
ビジネス統計 | 確率の基礎を習得した上で、統計データから得られる情報について判断する能力を養う。 | ||
アジア分野 | 中国ビジネス | 事例を通じ、企業経営の立場から中国の産業や企業の理解を深める。 | |
アジアの産業と企業(※) | アジアにおける事業展開と課題及び価値連鎖構築の戦略を考察する。 | ||
アジア・ビジネス戦略 (※) | アジアにおける日系企業の経営課題、ビジネス戦略について学ぶ。 | ||
異文化コミュニケーション ※ | 英語によるコミュニケーション能力を習得し、自分の意思の積極的表現法を実践的に学ぶ。 | ||
アジア多国籍企業 ※ | アジアにおける多国籍企業に関わる経済学的な課題を取り上げる。 | ||
MOT分野 | 産業と技術 | 情報技術や先端技術の動向を探り、それが産業にもたらす構造的変動を分析する。 | |
研究開発マネジメント | 日本のモノづくりにおける歴史、技術戦略、マネジメントプロセスを理解する。 | ||
ベンチャー企業 | 多面的な課題に接近し、ベンチャー企業の創造と成長に必要な能力と論理を学ぶ。 | ||
産学連携マネジメント | 産学連携、技術移転に係る実践的知識の習得と、マネジメント可能な人材を育成する。 | ||
生産管理 | モノづくり企業の製品・生産戦略の全体構造と生産システムの基本特性を学ぶ。 | ||
イノベーション・マネジメント | イノベーション発生メカニズムの解明とその促進のための戦略の枠組みを学ぶ。 | ||
起業機会探索 | 実際の技術シードから商業化させるプロセスを習得する。グループワークを通じてチームマネジメントを体験的に学習する。 | ||
知識マネジメント | 経営資源としての知識の特質とその活用等に係る経営戦略の枠組みを学ぶ。 | ||
知的財産管理 | 知的財産の基礎知識を習得した上で、知的財産マネジメント実践能力を養成する。 | ||
ビジネスにおける競争優位性特論 | 経営において競争優位の源泉となる中核的な能力や資源に着目し、その形成や活用の手法を学ぶ。 | ||
コーポレート・アントレプレナーシップ特論 | 企業内の新規事業立ち上げ、若しくは関係会社経営にあたることを想定し、最適な機会認識、組織設計、運営を行うための知識を習得する。 | ||
プロジェクト・マネジメント ※ | プロジェクト・マネジメントの基礎知識を習得、成功に導く管理技術の体験を行う。 | ||
先端技術分析 | 先端技術を分析する能力と知識を学ぶ。 | ||
特講・特論 | 産業マネジメント特講Ⅰ※ | ||
産業マネジメント特講Ⅱ | |||
マネジメント特論Ⅰ | |||
マネジメント特論Ⅱ | |||
マネジメント演習Ⅰ-1 | |||
マネジメント演習Ⅰ-2 | |||
プロジェクト演習 | 産業や企業を取り巻く課題や経営環境の分析、新たなビジネス・モデルやビジネスの創出など学生の関心のある分野について、教員より研究指導を受けながら調査研究を行い、プロジェクト論文を作成する。プロジェクトを通じて、基礎学力、分析力、論理的考察力、プレゼンテーション能力などの向上を図る。 | ||
インターンシップ | 実際のビジネスの場においてマネジメント実務を直接体験することを通じて、マネジメント・センスや実務能力等を養成する。 |
*英語による講義
※選択必修科目で英語による講義。ただし、「国際マーケティング」、「アジアの産業と企業」、「アジア・ビジネス戦略」及び「国際企業分析」においては、英語による講義の場合のみ選択必修科目とする。日本語での講義の場合は,選択科目として扱う